佐々木整形外科で治療した症例集です。当院では西洋医学的診断をベースに
筋肉の治療を行っています。筋肉の治療を加えることで、他の医療施設とは
多少異なる治療結果になっていますので、ホームページで掲載することとしました。
当院を受診する際の参考にしてください。
筋肉の評価・診断・治療法は発展途上です。その理由は、筋肉の機能障害程度が、まだ、正確に評価されていないからです。
今日の整形外科診断は画像診断と神経学診断が中心です。画像診断法は骨や神経や関節・靭帯などの形態異常を発見することにすぐれています。つまり、筋肉の病気の中では、筋組織が切れてしまったり、筋肉の腫瘍などの筋肉の形に変化を生じる病気の場合には、適切に診断できます。
しかし、筋肉の機能的障害は、レントゲン写真やMRI・CTなどの画像で表わすことができません。このため、筋肉の機能の悪化をまだ評価できないのです。評価が出来ないということは、症状があっても、第三者つまり医療者側がその状態をどの程度のものか判断できないのです。病気の状態を評価・診断ができないのですから、適切な治療法を決めることもできません。
そのため、大概の医療機関では、レントゲン写真などの画像所見で異常がなければ筋肉の機能障害を考えにいれないため、まず、一般的保存療法で様子を見ましょうということになります。これらの一般的治療が効果なく、筋肉が原因の痛み・しびれをさらに医師に訴えても、医師は筋肉機能障害の評価ができません。ですから、西洋医学では、筋肉の症状を軽視しているかのような外来診療となってしまうのです。
骨が折れて痛いのであれば、レントゲン写真で骨折を確認でき、骨折に伴う痛みの管理を含めて骨癒合するまで、医師は適切な治療管理を行ってくれます。神経が圧迫され麻痺症状がある場合には画像診断で病気の状態を判断でき、神経学診断を合わせ、的確に神経麻痺を治療します。
つまり、痛み・しびれが神経・骨・関節靭帯由来であれば、医師は画像で診断し的確な治療可能なのです。しかし、筋肉が原因の機能的障害であれば、その状態を評価できないため、治療法は、薬か運動療法という画一的なものになりがちです。運動・物理療法や薬物療法はときには筋に対しても素晴らしい治療法で一部の筋肉の機能障害に有効なのですが、無効例も非常に多く、これらの筋肉由来の痛みの治療が十分なされていない状態なのです。
今ある症状が、筋肉からきているかどうか、判断する方法が二つあります。
一つ目は症状の特徴です。筋肉からの症状は、筋肉を使わない状態では無症状であることが多いのです。つまり、安静にしていると症状がなく、体を動かすなど、筋肉が機能した時に痛むということです。慢性の痛みで動きに伴う症状の場合には、筋肉の痛みをまず念頭におくべきです。
二つ目は痛みがある筋肉を押すと痛むということです。筋膜性疼痛という言葉があるように筋肉の膜に痛みがあり、この特徴はトリガーポイントブロック注射を行う際、注射の部位を特定する参考になります。筋肉を押すと、痛みが誘発される場合には、筋肉が原因の痛みであると考えてもいいかもしれません。
筋肉に負担がかかる動作には、多くのものがあります。ですから、障害された筋の種類によって,様々な症状が出現します。体勢を変える時の痛み、スポーツ・運動での痛み、体重をかけると発生する痛み、階段の下りにのみ出現する痛み、歩行で悪化する痛み、座位で生じる痛みなどです。
筋肉治療する場合に最も重要なことは、筋肉以外が原因の症状を除外することです。つまり、神経、骨、軟骨、半月板、靭帯が原因の症状を適切に診断し筋肉の症状と分けて治療する必要があります。原因別に適切な治療をすることが望ましいのです。
骨関節や神経が原因となっている場合、症例によっては手術治療が最も良い治療方法と判断され、速やかに手術できる病院に紹介することもあります。
やみくもに筋肉治療に専念することは好ましいことではありません。
ただ、個人的な印象では、骨関節の病気にも筋肉の症状が併発していることが多く、手術が必要なほどの痛みでも、筋肉治療で症状が軽くなってしまうことが多々あります。 しかし、もとの骨関節の病気を治したわけではなく、付随する筋の症状を取り除いただけなので、また再発することが多いです。
同様に、整形外科の手術後に筋肉の症状を伴うこともかなりの頻度でみられます。この場合は、筋肉治療で症状が改善します。手術治療で根本の病気が良くなっているためです。このことは、私自身が沢山の手術を行い、術後の愁訴が、筋肉治療で軽減した経験から、間違いがないといえます。
一般の方々や筋肉治療を行ったことのない方々には、このような術後の症状を筋肉からかどうか見分けることは非常に困難で、豊富な経験や適切な診察が必要です。しかし、良い手術が行われたのにもかかわらず、症状が続く場合は筋肉からの症状の可能性も考えにいれなければなりません。私自身が筋肉治療を始めた理由も、完璧な手術を行ったと思った症例が術後も様々な症状が続き、筋肉治療で症状が消失した経験からなのです。一時は患者さんの精神的な問題かとも考えましたが、筋肉治療を行ったあとの晴れやかな患者さんの顔を見た時、これは精神的な病気ではないと気づきました。筋肉治療をすると患者さんの表情が明るくなっていくのが、良く分かります。
当院の針治療の特徴は、灸頭針法という針に艾(もぐさ)をのせ、針刺激だけではなく、熱刺激も加える方法をおこなっています。針を単に刺す方法や針に電気を流す治療法よりも、筋肉をリラックスさせる効果が大きく、筋肉治療に優れた治療法であると考えています。
トリガーポイントブロック治療は筋・筋膜性疼痛症候群(MPS Myofascial Pain Syndrome)に効果的です。針治療もMPSに有効ですが、MPSの数が多い時は、トリガーポイントブロックを優先します。
右の表に当院の治療症例を掲示しました。様々な痛みを挙げました。障害された筋肉に対して、針・体幹ストレッチ・トリガーポイントブロックの併用療法が、どのような効果をあげることができるか、推察できると思います。
若年者では治療回数が少なくても比較的良好な結果です。高齢者でも、治療に反応し長年の症状が、軽快することもよくあります。
しかし、まだ、全例が良くなるわけではなく、治療に反応しなくなる例もありますし、治療の途中で一時的に症状が悪化することがありますのでご承知おき下さい。 この一時的な症状の悪化は筋バランスの変化で生じるもので時間の経過で軽快します。
体幹ストレッチは当院オリジナルのものです。体幹診断も当院オリジナルで体全体の筋バランスの評価に有用です。詳細については、今後掲載予定です。